2, なぜ加工でん粉か?

でん粉を加工する

未加工でん粉の欠点を補う技術がでん粉の加工です。主な加工方法として架橋、安定化、低粘度化があげられます。

架橋

架橋とはでん粉分子の結合を補強すること。この架橋技術によって膨潤を抑制することが可能となり、高温、長時間加熱、低pH、強い撹拌など、でん粉分子の水素結合を破壊し、膨潤を促進する条件下でも、でん粉粒が膨潤・崩壊しにくくなります。

安定化

安定化は老化を抑制する技術で、でん粉の老化によるゲル化、離水、外観や食感の変化を防ぎます。この技術ではでん粉粒内に官能基を配置、相互の反発力と立体構造によりでん粉分子が元に戻ろうとする動きを抑制、糊化状態を維持するものです。

架橋+安定化

食品の中には架橋と安定化の双方の機能性を求められるケースも多く見られます。厳しい製造、流通、保存環境のすべてをクリア、消費者においしさを届けたいときは、架橋と安定化の双方の機能を持った加工でん粉が使用されます。

低粘度化(酸化、酸処理など)

でん粉を酸化させたり、細かく分解し安定化することで、でん粉の糊液の粘度を調整することができます。食品に緩い粘度を付与したいときや、薄い皮膜でコーティングしたいときなどに威力を発揮します。

ブラベンダービスコグラフとは何か

ブラベンダービスコグラフは温度と時間によるでん粉の粘度挙動の特徴を把握するための分析方法です。横軸に時間、縦軸に粘度および温度を取り、でん粉の糊液の粘度が温度の上昇、維持、低下に対しどのように挙動するかを示すものです。下図は標準的な架橋、安定化でん粉と未加工でん粉のデータを同じ座標軸にプロットしたもの。未加工でん粉は温度上昇後70度付近より膨潤、その後崩壊し粘度が低下するのに対し、加工でん粉は粘度を維持しています。

加工でん粉の応用例

調理めん、冷凍うどん

調理めん、冷凍うどんなどの食感改良に、でん粉は広く利用されていますが、老化によってそのなめらかさ、弾力性が失われてしまいます。安定化でん粉は食感を改良し、さらにその状態を長期の保存期間中も維持します。
使用でん粉:NATIONAL 7
添加量:20%

ベーカリーフィリング

ベーカリーフィリングの製造工程には強い撹拌や加熱などが含まれ、でん粉にとって極めて過酷です。この問題を解決したのが架橋・安定化でん粉。製造中に起こるでん粉粒の崩壊による粘度低下などの品質劣化を防ぎ、最終製品である菓子パンなどのおいしさを守ります。
使用でん粉:THERM TEX
使用量:3%

レトルト・デミソース

レトルトのデミソースは、低いpH、高温高圧下での製造・殺菌、長い品質保持期限など、極めて厳しい条件をクリアし、その上更においしさが求められる食品です。架橋、安定化されてたでん粉は、そんな中でも食品の品質を維持しながら、さらに差別化できる新しい食感を実現します。
使用でん粉:THERM FLO
添加量:2%

冷凍グラタン

調理から解凍まで、冷凍食品には様々な物理的ストレスがかかります。架橋し、さらに安定化したでん粉は、そのすべてのプロセスに耐え、高品質を維持します。
使用でん粉:NATIONAL FRIGEX
添加量:3%

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